私はずっと考えている。
この関係の呼び名を。

私は4年前に、昔から決められていた所謂「許婚」とやらと結婚した。
全然知らない相手と突然結婚した訳ではなく、私が子供の頃から知っている、父の会社のお偉いさんの息子と結婚したのだ。

私と主人の馴れ初めは、私が小学校6年生の時まで遡る。
その日、父の会社では創立周年イベントで、どの従業員も家族総出でのパーティーに参加していた。
ベンチャー企業で従業員の数もそう多くないので、どちらかというとホームパーティーの様相だったように思う。
とにかく、そのパーティーで私は父の会社の社長の息子、その時はその会社の新入社員だった人に見染められたのだ。
年齢差、実に10歳。
子供の頃の10歳はまるで親子ほどの差に感じるが、成人してからの10歳なんて、大した差ではない。
私が大学を卒業したタイミングで入籍をして、もう4年。
結婚するよりも前からお互い連絡を取り合っていたので、「こんな筈ではなかった」というような思い違いはないが、最近は油断しているのか「なんでこうなったんだろう…」というような後悔をすることがある。

今日だって、隣の幼馴染の腕で微睡みながら、この「隣のお兄ちゃん」との関係と、結婚生活についてを考えている。

「愛実ちゃん、寝ちゃダメだよ」
耳元で優しく私を起こす声がする。
「おにいちゃん…寝てないよ…それより今何時…?」
「17時半。帰らなくていいの?」
「帰らないと…でも帰りたくない…」
「けんたろさん、今日は帰ってくるんでしょ?」
「…うん…」
私は渋々起き上がり、脱ぎ散らかした服を着て、髪を整える。
口紅を塗りなおし、おにいちゃんのほうを振り返る。
「おにいちゃん…彼女は?」
「もしいたら愛実ちゃんとここにはいないよね?」
私は黙り、俯く。
本当は私が彼女になりたかった、でもそんなことは口が裂けても言えないから、せめてこのわがままだけ。
「…おにいちゃん…春兄ちゃん…出る前にぎゅってして」
春兄ちゃんは私を抱きしめて、頭を優しく撫でた。
「俺が愛実ちゃんの彼氏だったらよかったのにね…」
私はその真意を汲み取ることができず、肯定も否定もしないまま、春兄ちゃんの腕の中で息を潜めて涙を流した。

私と隣のお兄ちゃんの、この名前のない関係の始まりは、半年前…そもそもは2年前に遡る。
たまたま私の職場にお兄ちゃんが買い物に来た、それだけだった。
「お兄ちゃん?春兄ちゃん?」
懐かしさのあまり、仕事中にも関わらずつい声をかけてしまった。
春兄ちゃんは最初、私が誰か分かってなかった。
「愛実だよ。隣の家の。京ちゃんの同級生の」
京ちゃんは春兄ちゃんの4歳下の妹。私と同い年で、京ちゃんと遊ぶのにかこつけて、隣のおにいちゃんに会いに行っていたのだ。
「あぁ!愛実ちゃん!久しぶり!8年ぶり?」
「春兄ちゃん全然変わらない!」
「愛実ちゃんはすっかり綺麗なお姉さんになったね」
春兄ちゃんは私を見つめて優しく笑いかけた。
「ねえ!この後時間ある?あと15分で今日のお仕事終わりなんだ!ごはんでもどう?」
と言ったところで、このやり取りを見ていた現場の主任が
「海堂さん、今日はもう上がりでいいよ。久しぶりに会う人なんでしょう?」
と助け船を出してくれた。
「俺も会社には直帰って言ってあるから、愛実ちゃんがいいなら今からご飯でも行こう?」
こうして、私とお兄ちゃんは再び連絡を取るようになった。
私の旦那である健太郎さんが出張や夜間作業が多い人で、必然的に春兄ちゃんと夕食を共にする機会が多くなり、夕食の時にお互いの空白時間をたくさん話しすることになった。
私の大学時代の話(家から通いにくい学校に進学したから一人暮らししてた)、春兄ちゃんの仕事の話、それから、お互いの恋人の話。

私に許婚がいることは、春兄ちゃんは知っていた。
それでも大学生の時に他に彼氏を作ったことを話すと
「真面目だって思っていた愛実ちゃんがそんなことしてるなんて!」
と大笑いしていた。
ちなみにこの大学の時の彼氏の存在は、健太郎さんも知っている。
というより、健太郎さんが「自分以外の男のことも知っておいた方がいい」と言ったから付き合ってみる気になったのだ。
健太郎さんにも過去に数人彼女がいた。私が知っている限りで、私の高校時代に2人、大学時代に5人。
健太郎さんはその彼女のいずれかと結婚することだってできたのに、どうして私を選んだのかは未だにわからない。
私の父が社長なら、おそらく社長の座を狙って、と容易に想像がつくのだが、健太郎さんのお父様が社長で、私の父はただの社員。メリットがわからない。
その話をしたら、春兄ちゃんは
「愛実ちゃんは面白いから一生一緒にいても飽きないって思ったんじゃない?」と言った。
私は自分で自分のことを面白いと思ったことはないけど、春兄ちゃんが言うのだからきっとそうなのだろう。

そうやってお互いのことを話していくうちに、私の健太郎さんへの愚痴を聞いてもらうようになり、ある日私が放った衝撃的な一言でこの関係が始まることになる。

「健太郎さん以外の人とセックスしてみたい。」

春兄ちゃんは呆気にとられた顔をして、しばらく固まっていた。
その後、今まで見たことがないくらいの大爆笑をして、こう言った。
「俺が相手しようか?」

私は健太郎さん以外の人とセックスしてみたいと言った時点で自分のことをクズだと思ったけど、私が結婚しているのを知っているのにも拘わらず、その無茶な好奇心に応じようとしてくれいている春兄ちゃんは私と同じかそれ以上のクズだと思って、笑ってはいけないのに笑えてきた。
暫く二人で腹を抱えて笑った後、急に春兄ちゃんは真顔になり、言った。

「で、愛実ちゃんは本当にいいの?今なら質の悪い冗談で済むよ?」
私は深呼吸をして、こう言った。
「こんな質の悪い冗談が言える程ユーモラスな人じゃないのはよく分かってるでしょう?」
本気だよ。ずっと考えてたの。
このまま私は健太郎さん以外の人とセックスすることなく死んでいくのかなって。
私まだ26歳だよ?大学生の時の彼氏と、健太郎さん。たった2人。
他の人からしたら充分かもしれないけど、私はもっと知りたいの。
大学生の時の彼氏と、健太郎さん以外の人はどうやってセックスしてるのか。
それはそんなにいけないこと?
子供が今まで知っている手段以外にも成し遂げる手段があるって知りたくなるのと同じだと思うの。

「1回だけ、だから。お願い、お兄ちゃん。」

春兄ちゃんは暫く黙り込んで、私をまっすぐ見据えて口を開いた。
「愛実ちゃん、じゃあ、条件をつけよう。
一つ、絶対誰にも言わない。それは俺も同じ。
二つ、本気にならない。これも俺と同じ。
三つ、もしどちらかが本気になったらこの関係は終わり。誰かにバレても終わり。守れる?」
その時はとても簡単な条件だと思っていた。
「わかった。そんな簡単なことでいいの?」
「…愛実ちゃん、一つ目の条件はそうでもないけど、二つ目の条件って、思ってるより難しい人もいるんだよ?俺は多分そうでもないけど、愛実ちゃんがそうならない保証はないからね。」
「…大丈夫だよ、気持ちを押し殺すのは慣れてるから」
「それどういう…」
私は春兄ちゃんの唇を奪い、そのあとの言葉を塞いだ。
「…いいから、しよ?」
春兄ちゃんの一人暮らしの部屋で、私の手料理を食べていたけど、冷めた料理はそっちのけで、私たちはお互いの好奇心を満たす旅を始めた。
あたしがいつまでも
この小さな
液晶画面から広がる
空想ネットワークに
依存するのは
まだ見ない貴方を
探しているから

あんなに深く深く
愛し合ったのに
貴方は忘れてしまうの?

あたしはいつでも
この世界で待ってる

貴方がもう一度
出逢った時のように
見付けてくれることを

そうしたら
貴方がつけてくれた
コミュニケーションヘヴィーユーザという
病気も
治るかも

もう一度
出会いからやり直そう

(2002年に書いた作品です)

桜の季節

2008年2月25日
自由を得たら

淡い恋心を沈めに行こう

叶わないと知っているから

海の見える

美しい桜の咲く場所へ

つめたい月

2007年4月28日 ポエム
桜色の爪

川に浸して

眠りをさそう。

夜の川に

映し出された

不満げで未完成な月


まるであたしみたいで。


心のシャッターを何度も切った。

カシャ、カシャ、カシャ、カシャ…

代わり

2005年9月24日 ポエム
ため息の代わりに
煙を吐き出し

涙の代わりに
肺を落とす

それでなんとか
ごまかさなくっちゃ

なんでそう思ったか
分からないけど。

ごまかさなくっちゃ

空洞

2005年9月21日 ポエム
心の中を探してみても
何も見つからない

喜び
怒り
哀しみ
楽しさ

みんなどこかへ消えうせた。

ただ、むなしさだけが残った

2005年9月12日 ポエム
抱きしめるより先に
手が出た

涙より先に
口が出た

シグナルに気付けなかった
自分に腹が立った

マスク

2005年8月8日 ポエム
今そのマスクを剥いだだけ
あなたの前ではずっとそのマスクをつけてたわ

あなたは自分で頭がいいというけれど
わたしのマスクすら見抜けないなんて

成績がいいのと頭がいいのは違うのよ

ただあなたの場合

どちらも悪かったみたいね

あなたの前での
マスクをつけた踊りと
マスクをつけた芝居は
誰よりも心得てるつもりだわ

見抜けるはずがない
永遠に

ホットタイフーン

2005年7月25日
『台風7号の予想進路は…』
私はテレビを消した。
ヒュー…カタカタカタ…
風が窓を叩く。

ポーン…

随分前から電源をつけたままにしていたパソコンがメールを受信したことを告げる。
差出人は母。
独り暮らしをしている娘の安否を気遣った、義理だけのメール。
さすが義理の母。メールの本文も義理がかってる。
「台風が近付いてるみたいだけど、気をつけてね」
みたい、じゃなくて本当に近付いてるんだってば。
私はそう呟いてメールを削除した。

ポーン…

またメールだ。
携帯よりもパソコンのほうがメールを受信するのかもしれない。
実際、パソコンの電源を入れっぱなしにしだした日から携帯のメール受信音は一度も鳴っていない。当然着信も。
差出人は不明。

件名:泣いてない?
本文:さゆ、久し振り。明日で1周忌だね。
俺はこっちの生活にも慣れ、友達も出来た。
結構楽しくやってるよ。
ところで、台風が来るみたいだけど、大丈夫?
さゆは昔から台風が嫌いだったからね、心配だよ。
今からそっちに行こうか?

本文はそれで終わっていた。
誰だろう。
とりあえず、誰ですか、と返信してみた。
スパムにしては手が込んでる…
すると、即返信が来た。

件名:小雪だろ?
本文:こゆき、そう書いてさゆきって読む俺の可愛い彼女。
俺のこと忘れたの?

どうして私の名前のを知ってるの?
気味が悪いよ!
それに彼女って何?
そう返信した。

件名:やっぱり忘れたのか…
本文:仕方ないよな。俺が死んでもう一年経つんだし。
さゆは一生覚えていてくれるって思ってたのに…
今からさゆの家に行くよ。そうしたら俺が誰か分かるから。

…は?
もしかして時代遅れのストーカー?
でも、家に引きこもりがちで、バイトも家の中で出来るようなチャット嬢しかやってない私にストーカーなんてあるはずがない。
気味が悪いので返信をやめた。
でも、やはり気になって、返信しようとしたらインターホンが鳴った。
隆宏が生きていた頃は毎日鳴っていたインターホン。
事故死してから一年、まったく鳴っていなかったインターホンが鳴った。
カメラで確認したら…
「た…かひろ?」
「開けてよ、さゆ。外は雨と風がひどいんだ」
確かに、知らない間に外は雨が降り出し、風がひどくなっていた。
私は鍵を開け、隆宏と同じ顔の『誰か』を招き入れた。
いつもの私ならそんな無用心なことはしないが、隆宏を殺した台風への恐怖と、まだ愛してやまない隆宏への想いが容易に扉を開けさせたのだろう。
「隆宏?」
「そうだよ、さゆ。戻ってきたんだ」
「そんな筈ない。だって隆宏は去年の台風の日、仕事から帰る途中に事故に遭って死んだんだから!」
「もし、死んでなかったとしたら?」
「え?」
「もし俺が死んでなかったら?」
「そんな筈ない!だって私は冷たくなった隆宏に触れた。骨になった隆弘も見た!」
「そうだね。俺は確かに死んだ。でも、戻ってきたんだ。一年に一度だけ、俺達は戻れるんだよ」
隆宏が言うには、毎年命日前日から命日にかけて、自分の逢いたい人の所に戻れるらしい。
「本当に隆宏か証明できるものってある?」
隆宏が黙り込んだ。
「さゆ…一度死んだら記憶は殆ど消されてしまうんだ。ただ、自分と関わってた大切な人とその関係しか覚えてないんだ」
「そう…」
沈黙が続く。
私と隆宏が恋人同士だった頃はその沈黙すらも楽しかったのに、今は苦痛でしかない。
「ねえ隆宏。キスしてみて?唇は覚えてるかもよ?」
隆宏はうつむいた。
「さゆ…いや、小雪さん。ごめん」
「え?」
「俺は隆宏の弟の和宏。隆宏の一つ下の弟」
「し…知らないよ、隆宏に弟が居たなんて話」
「そうかもしれない。顔は兄と一緒なのに双子じゃなくて、考え方も正反対。俺のことが疎ましかったんだろうね」
「お葬式のとき、何で居なかったの?」
「俺もね、事故に遭ってたんだよ。その日。いつものように兄が学校まで迎えに来てくれて、そのまま事故に遭って…俺は集中治療室に居て、兄は死んでしまった。せめて葬式には出たかったけど、その時俺は意識すらなかった」
「何で今更私にメールをしたの?からかって楽しかった?」
私は怒りをあらわにした。
「これを言い出したのは、小雪さんの妹なんだ」
「希恵が?どうして希恵と和宏君が知り合うことが出来たの?」
「兄に希恵ちゃんのメアド教えたことない?」
そう言われたら…何かあったときの為、隆宏には希恵のメアドを、希恵には隆宏のメアドを教えていた。
「希恵ちゃんのメアド、実は俺も教えられてたんだ。『俺と小雪に何かあったときに、真っ先に希恵ちゃんにメールしてくれ』って。それから希恵ちゃんとは普通にメールするようになってた。希恵ちゃんが言ってたよ。まだ姉に元気がないから…って」
「そう…」
私は妹の余計なまでの優しさに涙した。
私にとっては義理の妹でしかない、そう思ってたのに、妹にとってはこんな姉でも大切な姉だったみたいだ。
同時に隆宏も、もう兄だと思っていたんだ…
「だから、希恵ちゃんを責めないで」
私はコクンと頷いた。
「和宏君…ありがとう…」
それから和宏君は私を抱き寄せた。
段々と強まる雨と風。
今年はじめての台風。
気がついたら和宏君の胸の中で眠ってしまっていた。
その日、夢を見た。
隆宏が手を振って、和宏君と私を置いていくという夢。
最後に振り返った隆宏は、清々しい笑顔をしていた。
私は目を覚ました。
そこには和宏君の姿はなかった。
外は昨日の台風が嘘のような青空。
パソコンには新着メールがあった。
差出人の名前は、和宏。
本文には携帯の番号とメアドが書かれていた。
そして最後に一言。
「俺は兄の代わりじゃない。だから、兄と違う人間だって思えたら電話して」
私はふっと笑って携帯を手にした。
隆宏が居なくなって今日で一年。
ようやく私の時間は動き出す。

ホットタイフーン

2005年7月25日
空の色が変わる。

もう来てしまったんだ。
あの季節が。

そのままいやなことをつれて
遠い海の上で
温帯低気圧になってしまえばいいのに…

no sleep

2005年7月17日 ポエム
悲しみの半月
かくれんぼする夏の星座
屋根に上った仔猫が
ちりんと鈴を鳴らす

暁色の羽
眼に焼きついて離れない
晴れた空
あなたが死んだ日

眠らずに過ごす
冷たいサイダーと
睡眠薬をお供に

薬に反して
眠らず過ごす

鳥の鳴き声が
眠らない苛々を増幅させ
あなたの喪失の悲しみを
無理矢理にでも忘れさせる

朝日が昇ったら
あたしも動かなくっちゃ

そばに、いってもいい?
あなたが傍に居たときに
言えなかった言葉
今になって言うよ

そばに、いってもいい?
だめっていっても、いっちゃうよ?

オーバー

2005年6月21日 ポエム
小さな箱を握りつぶした

その中には
貴方に宛てたピアス

もう戻らない時間を思い出しては
手の中の小さな箱に
涙をぶつける

嘘も真実も見抜けないまま
季節が一つ終わる

なくした言葉

2005年6月14日 ポエム
どうしてうまく言えないの
いつからこんな風になったの

行かないでなんて
柄じゃない

そんな事言ったって
納得できない

あたしのこと
ほんとにすき?

そう聞いたら
あなたは不貞腐れるけど

きいてもいい?

ほんとうにすき?

Kiss

2005年5月19日 ポエム
こんなのなんて
ただ
触れただけじゃない

唇と唇が掠めただけ

それなのに

それなのに…

過去の貴方との記憶がフラッシュバックして
頭が痛くなる

もう2度と振り返らないと決めたのに
何度も 何度も
振り返っては貴方を確認する


記憶は残酷
感触は引き金
貴方はあたしをどう思った?


貴方の記憶の中のあたしを
綺麗な色で染めないで
暗くて淋しい色にして

そんな明るい色
あたしには
今のあたしには似合わないよ

今日の食事。

2005年3月9日
あぁ…
おなかすいたなぁ…

そうだ、僕はさっき、さっきといってももう6時間も前のことなんだけど、その、さっき、苺のショートケーキを一つ食べただけなんだ。

あぁ…
おなかすいたなぁ…

気がついたら隣で君が寝てた。

ぽってりとした下唇。
やわらかく大きな胸。

僕の家には何故かチョコレートシロップがあって。
それは僕のものなんだけど。
僕の家には何故かホイップクリームがあって。
それも僕のものなんだけど。

すやすやと寝息を立てる君に、そおっと、そおっと近付いて、そのぽってりとした下唇にホイップクリームを塗ってみる。
まるで一昔前のヤマンバギャルだ。
僕はククッと笑って、更にチョコレートシロップもかけてみた。
それでもまだ起きない鈍感な君。
もう既に死んでるのかと思ったけど、そんなはずはない。
だってまだヤマンバの唇は動いている。

僕はにやりと笑い、その出来損ないのケーキにかぶりついた。

硬い。
思ったより硬い。
唇を塞がれた君は叫ぼうにも叫べずに、じたばたじたばたするだけだった。
出来損ないのケーキの赤いシロップは甘く、それから独特の鉄の味がした。

次は僕が彼女の中で一番すきだったその豊満な胸だ。
ホイップクリームを沢山つける。
そして、チョコレートシロップも沢山かける。

その時彼女は下唇を失った痛みに耐えられずに失神していた。
彼女は知らないだろう。
次はその自慢の胸まで失うことになるだなんて。

僕は最期の晩餐を堪能した。
クリームを舐めまわし、なくなったらまた飾り立て…
彼女は気持ちいいのだろうか。
軽くあえぐ声が聞こえる。
痛みはもう麻痺してしまったのだろうか?
それともホイップクリームとチョコレートシロップの冷たさ、それを舐め取る僕の舌が痲酔となっているのだろうか?

彼女は潤んだ目で僕を見つめる。
下唇を失ってしまったことを忘れてしまったのだろうか。
試しに彼女の秘部に手を当ててみた。
濡れている…
それは下唇を腹におさめたときの痛みで失禁してしまったのか、それとも愛液かは分からない。
彼女はぱくぱくと酸欠の金魚のように口を動かした。

「 イ レ テ 」

掠れた声だが、確かに彼女はこう言った。

なんてこった!
僕の彼女は自分の下唇がなくなっても快楽に負けてしまうような淫乱だったのか!
ジーザス!

僕は軽蔑した笑いを漏らし、本当はさっきからずっと痛いほどに力を蓄えていた僕を挿入した。

ゆさゆさと揺れるホールケーキのような胸。
彼女は声にならない叫びをあげ続けている。

「いくよ?」
僕は囁いた。
彼女はイクのと勘違いしたらしい。
「ナ カ ニ ダ シ テ」

僕は恍惚の表情を浮かべ、彼女の胸に勢いよく齧り付いた。
左側の、心臓の近く。
もし喩えるなら、下唇は前菜程度。
胸はメインディッシュだ。
苺色シロップの量も味もまったく違う。

結局最後は彼女のご希望通り、中に出してやった。
でも、そのことを彼女は知らない。
何故なら…

透明度500の空

2005年1月28日 ポエム
ひとつ
ふたつ
みっつ

よっつ
いつつ
むっつ

まっさおで
そのまま
水平線を見ると
白くかすんでしまう
そんな空で

真昼の月に照らされた
星の数を数えた


ねぇ
それが
君の最後のメッセージ?

数えられなかった
北斗七星の
七つ目の星は

きみとぼくの
最後のキス

携帯変えたよ!

2004年12月6日
色はオレンジです。
かなり派手。
無駄なアプリがついてたりするけど、退屈しのぎにはなるかなって感じ。
まだ使い始めたばっかりなんでなんともいえないけど…

空気の感情

2004年11月10日 ポエム
窒息しそうな
青い 蒼い
早朝の空気

まるで
あたしと一緒に
泣いているかのよう

日が昇っても
まだ しんとして
青々とした
つめたいそらは

あたしの涙を
乾かしてはくれない


大好きよ。
あなた。

この空の下に
貴方の笑顔をもう一度、
そう願わない日はないくらい

stay

2004年10月30日 ポエム
眠れない街

眠らない街

眠れないあたし

眠れない君

目の前にある国道を

裸足で駆け抜ける

突き進んで

突き進んで

車なんか怖くない

未来 人間

そっちの方が

あたしたちには

恐怖

だから

いつまでも

ここにいたい
あなたの部屋で

外を眺める

すやすやと

安らかな寝息を聞きながら

あなたは嗤うかもしれないけど

わたしは遠くに行きたかった

あなたとわたしを

誰も知らないところまで

そうしたら

手を繋いでも

ハグをしても

恥ずかしくはないでしょう?

この街は狭いよね

いつかあなたが

笑いながら言った言葉

その時に決めたの

いつか

ぜったい

あなたと

遠くにいくって

ゆうやけの速度よりも速く

遠くにいくって

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